建物のエイジングを慈しむ大正モダン風の賃貸併用住宅
(高付加価 高収益型 賃貸住宅) 2002年に完成した大正昭和レトロな住宅を今また紹介させて頂きます。 「大和撫子」という日本女性の楚々とした美しさを表現した言葉がもっとも相応しかった 大正から昭和にかけての時代、同時期に多く建てられた西欧のハイカラな文化を取り入れた 洋館にオマージュを込めて、※「なでしこハウス」と命名しました。 ありきたりの建物では経年劣化と共に住民は新しい賃貸に移ることでしょう。 住む人のプライドをくすぐる要素をちりばめて付加価値といたしました。
およそ70坪の敷地に古家と広めの庭にお住まいとのことでした。 都内の地価は高く、毎年の固定資産税も悩ましいところです。 ご子息は建替えに際して賃貸併用住宅を希望されておりました。 1.2階を賃貸にして3階をオーナー宅とした四角い集合住宅をイメージしていたらしいのですが、 通りに出るまでの通路の幅が1.8m程しかなくとても車が入ってこれない場所でした。 駐車場を造っても肝心な車が入って来れません。 駐車場が無いのでは苦戦を強いられること間違いありませんでした。
四角い集合住宅というのも気になりました。 ありきたりの建物では経年劣化と共に住民は新しい賃貸に移ることでしょう。 同じ土俵での戦いはもはや「戦わずして負け」の様相を呈しておりました。 そこで今回は駐車場を必要としない、 車を持つことに価値を見出さない人や建物の経年劣化(エイジング)を 慈しむ心のある人をターゲットにすることにしました。
エイジングが美しく思える建物は何かを考えました。 桜の花のバックに写っていた学び舎、旅行先で訪ねた港町の街並み、 想い出と共に洋館には良い記憶が残されていました。 金属やコンクリートの建物に無い風格と落ち着き、 時を重ねることに魅力を増して行く洋館こそ、 今回のコンセプトに相応しいと考えたのです。 建物も隣家同士が壁や床で繋がっているアパート形式では 隣の音や抜けない風などでストレスを感じてしまうものなので 小さくても一戸建てを目指しました。
こうして小さい一戸建ての洋館の街並をイメージするまでには そんなに長い時間を必要としませんでした。
導き出したプランはオーナー棟1+レンタル棟2=3棟構成としたプランです。
住む人のプライドをくすぐる要素をちりばめて、隠れ家的なつくりにして 「こんなところにこんなおしゃれな洋館があったんだ」 と噂になるような存在をイメージしました。
建物同士の配置は碁盤の目のように整然とせず、 むしろ木が生えるように自然な距離をおいて自由な角度で建てました。 通路は木立の中を散歩するように小道状にして鳥の声や季節の花を楽しめます。
重厚感ある佇まいが住み手の心を豊かにさせてくれます。
レンタル棟の二階リビングは屋根のカタチのままの天井です。 頂部には天窓をつけて光を導きました。 屋上へはタラップ風の階段をつけて 私だけの空間に向う演出をしました。
こちらはオーナー棟の玄関。 歳を重ねたオーナーにマッチしたデザインタイルがゲストを迎え入れます。
「日本の大工さんが造った洋館」にこだわりました。 格子などは本来太く造るところですが、 日本の建具やさんが造ると障子の桟のように細くなります。 無骨な中にも繊細さがあるのが特徴です。
建具の向うはキッチンです。 レトロなガラスの雰囲気を出したかったのですが、 ソーダガラスは手に入りません。 ステンドガラスに使うガラスを流用して、淡い暖かな雰囲気をだしました。
実はこの建具はL型に開きます。 配膳台も現れて一気に使いやすくなるのでした。
ドアの上の明り採りを欄間といいます。 ドア本体は既製品を使ってその上に建具屋さんが 同じ色と枠で仕上げて頂きました。 先程の照明やこの欄間を工夫することで、 高価に見えるこの建物が本当は結構、コストダウンをしていることが お判りですか?
オーナー宅はとにかく一番環境のよい場所。 そしてレンタル棟となるべく視線、音などで 干渉を受にくい建物での工夫。 (ストレスをなるべく少なくする。) バリアフリーを多少考えた空間。 なるべく上下動を抑えたゾーニングとしました。
軽快な金属の建物も良いですが、自分と共に歳を重ねて味わい深くなる家はいかがですか?